公安隠密局の上忍〈無條政義〉が抜け忍となった。同時に「彼は地獄門の結界を解き、異界の門を開こうとしている」という噂が流れ始める。
事実として、これまで滅私を貫き国益を守る為に国と流派に尽くしてきた筈の男が、何の前触れもなく比良坂に秘蔵されていた〈蛇蝎ノ書〉を持ち出して姿を消してしまった。
それどころか、彼は殺人を繰り返しながら各地を転々としている。
事態収拾のため、無條の友人であり公安隠密局局長である麻生雅人は、彼の直属の部下を派遣した。
抜け忍狩り、隠忍の法術師、そして事態悪化を阻止せんとする者達。
それぞれの思惑も意に介さず老兵は黙したまま街中へ融けてゆく。
その道行に、一人の少女を連れて。