時は戦国。数多の戦乱が日本を覆う時代。
山間に位置する藤花国にも逃れ得ぬ戦火が迫ろうとしていた。
国難を前に、藤花城より逃げる影二つ。
一つは少年、名は花郎。
戦国大名・藤下道重の落胤にして、百鬼の華毒を身に宿す者。
一つは忍、名は明かさず。
百華の御子・花郎に従うただ一人の従僕。
滅び行く国から逃げるに他の理由は要らぬ。
しかし滅びを阻まんとする者には、二人を追う理由あり。
百鬼の華毒。
身に宿す者は、百の山の怪を従えられる力の源。
それは国を守るも国を奪うも思うがままの妖しの呪い。
呪いを欲した道重の下知を受け、二人を追うのもまた忍。
追い、追われ、向かい合い。
かくして刃交えたは、咲いて枝垂れる藤の下。
舞う血は花を赤く染め、追った忍が呪を手にする。
されど御子の忍は終わらず。
敗れども命(めい)あるならば。
倒れども命(いのち)あるならば。
立ち上がり、牙を剥き、使命がために影となる。
全ては主のために。
忍神『百華忍法帖 ―枝垂れ藤宮、花影渡し―』