世界観
突如として世界は「化物」たちによって崩壊をした。
「化物」が世界に現れてから文明が崩壊をするまで1年と掛からなかった。「化物」は銃器や兵器すらものともせず、人間が認知できぬ速度で動き、人間を喰らうのだから。
国や政府という機関が崩壊してからというもの、生き残った人々は少数のコミュニティーを形成し、少人数でただ、生き残るための生活を送った。
一部の都市は、その「化物」を排除し、独立国家のような形態を取ることに成功した、らしいがそんな場所は多くはないのだ。
多くの都市はがらんどうの廃墟となり、その廃墟の染みのような生活を送るものが殆どであったーー。
文明世界が崩壊してから5年。まだ、光のない生活を人は送り続けている。
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物語導入
If snow melts down to water, does it still remember being snow?
(雪が解けても、あなたはまだその水が雪であったことを覚えているか?)
ーージェニファー・マクマホン
北海道の大都市「札幌」であった場所も今ではただそこに、灰色の石の塔を晒すだけだ。
この北の大地において文明世界の崩壊とは死を意味した。最初は人間を喰らっていた「化物」たちも人間が少なくなってからは、「化物」同士で食らいあった。その様子は地獄絵図と云うほかない。
しかしながら、その御蔭か、この北の大地においても少人数の生き残りが存在した。
ここ「札幌」のコミュニティーは当初は数百人規模で点在していたが、4回訪れた冬、そして内部分裂、「化物」の襲撃によって今、どれだけ生きているのか正確に知るものは誰もいなかった。
奇跡と言えたのは、地下シェルターを持っていた裕福な家族がまだ生き残っていたことだろう。彼らは細々と、この4年間生活を続けていた。だが、誰一人として欠けなかったわけではない。
二回目の冬に、「父」が帰ってこなくなった。その次の冬に「母」が居なくなった。
最後にその家族を支えていたのは、その家族の長女と長男だった。
そして、5回目の冬が訪れる。