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シノビガミ リプレイ『夢のようなひび』

ED.エンディングフェイズ


ED-1.夢の終わり

シーンプレイヤー:不知火 輝


【輝】
「あとは、僕に任せて」
【GM/あかり】
輝を見た後、貴方たちはどうするのか、と言わんばかりに沙羅と、銀を見ます。
【輝】
「僕はこの世界を終わらせるためにここにいるから」夢世界を持ったシロを呼び寄せて、優しい目で銀と沙羅を見る。
【沙羅】
「……終わったら、どうなるの?」
【輝】
「終わったら…」
そこで言葉に詰まり、空を見上げる。
【銀】
「みんな消えるか、誰か残るかは知らないけどさ。」
「このままじゃいられないなら、仕方ないよ。」
【輝】
「みんな楽になれるよ、きっと」
【沙羅】
「………っ」なんとなくの予感は、なんとなくなりに当たるのである。銀の服の端を指先で掴みたい。俯く。
ぽたぽた。
【銀】
「たぶんね、地獄であいつも待ってるんだ。先に死んだくせに来るのが遅いって怒られる。」 からからと笑って。
【輝】
「沙羅」
【銀】
「いいこいいこ。」
【輝】
「ねぇ、沙羅」
優しい声で沙羅を呼ぶ。
【沙羅】
「うぅー……」ぽろぽろと涙ばかり零して。輝の呼び掛けに振り返った、この期に及んで縋るような。
【輝】
「ごめんね。嘘、ついてた」
【沙羅】
「………」ぐすっ、しゃくり上げながら声もなく、肯いた。
【輝】
「ねぇ、沙羅」
【GM/あかり】
あかりはその様子をじっと眺めています。沙羅の涙にほだされたかのような、どこか悲しげな視線。
【沙羅】
「……なに、輝くん」
【輝】
「僕は…君のことが好き」
【沙羅】
「……うん、」
【輝】
「そこだけは嘘ついてない」
【沙羅】
「輝くん、そういう嘘つかないの、……知ってる」
【輝】
「僕のこと、知っててくれて、ありがとう」
「僕のこと、覚えててくれて、ありがとう」
「でも、もう、これきりだから」
【沙羅】
不安そうな色がすぐに強まって、でも、首を振る。「……もう、終わり?」
【GM/あかり】
「そう、いつでも終わりに出来る。彼が、望めば」
【輝】
「うん」
「君と銀さんにとっては新たな始まり」
「そのスタートを切るために、僕はここで終わらせる。何を犠牲にしようと、君が好きだから」
【銀】
首をかしげて。
「はじまり?」 ぽつり、不思議そうに。
【沙羅】
「輝くんにとっては?」
【輝】
「僕は、終わり」
【沙羅】
「――やだ!」瞠目。地を蹴ろう、駆ろう、輝の元へと。
【輝】
「だめだ!」駆け寄ろうとする沙羅を制止する。
【沙羅】
「やだ!」制止されても止まらない。輝にしがみつきたいけど、避けられちゃうのかな。
【銀】
銀はただその様子を見ていよう。輝くんの選択というなら。
【輝】
避けはしません。
泣きながら「僕、そんなに強くないんだよ、知ってるだろ」
【沙羅】
じゃあ抱き着く。しっかりしがみつく。「知ってるよ……知ってるから、だから、」
【輝】
沙羅に抱きしめられ、泣きながら。
【沙羅】
「私が、ついてなきゃ」
【輝】
「最期くらい意地張らせてよ」
と言って沙羅にキスをしようとする。
【沙羅】
「だって……だって、」指先で輝を縋る。ひしと抱き締めて、けれどキスをされれば、驚きに身が、すこしだけ、ふるえた。
【輝】
そのまま世界はひび割れていく。夢世界を破壊します。

【沙羅】
「輝――」ひび割れた世界の中で、その声も、紡がれることができたのか。
【GM】
はい。では、その輝の意志とともに、バキン、と、ガラスにひびの入るような音が響きます。
【銀】
せかいに、ひびのはいるおと
【GM/あかり】
「これで、やっと……解放されるんだ……」
【GM】
あかりの見上げる空に、ひび。バキバキと音は鳴り続け、ひびは空と地を問わずに広がっていきます。
【銀】
「覚めちゃうねえ。」
【GM】
――そしてそれとともにあちらこちらから響き渡る、おぞましい歓喜の咆哮。
ここで、「夢世界」の秘密を公開します。
【輝】
お願いします。

夢世界の秘密

夢世界には死者だけでなく、同時に妖魔や異邦人も封じられている。
この世界に封じられた死者とは、彼等を退屈させ結界を破らせぬように提供された玩具である。死者達は彼等から肉体と魂は永遠の責め苦を受ける。
このプライズを1度でも所持した事のあるキャラクターは安らかな夢から覚める。
この秘密を持つ「街の主」以外のキャラクターはクライマックスフェイズ終了時に消滅し、死亡する。
このプライズを持った状態でクライマックスフェイズを終了したキャラクターは結界を解除する事ができる。
結界を解除した場合、中に封じ込められた全ての死霊と異邦人、妖魔が解き放たれる。
この秘密を得たキャラクターはクライマックスフェイズ開始時に自分の使命を「この世界を崩壊させる」に変えることができる。

【GM】
沙羅と銀はこの秘密を「得た」ことにはなっていませんので、消滅はしません。
【銀】
なるほど。
【沙羅】
ううう。
【GM】
あかりと、この秘密を得た輝だけが、この世界の本当の姿をずっと、ずっと見ていました。

舞台裏の反応

少年の決断


夢世界を手に入れた後、輝とGMは以下のような会話をしていた。

【輝】
死者たちは永遠の責め苦を受けつつ、夢を見ている?
【GM】
はい。渡来人達からの想像を絶する責め苦が分からぬように、夢を見ている。見させられている。
【輝】
解放すれば、死者は安らかに眠れる?
【GM】
成仏するも地獄道に行くも、そこからは私の手の元ではありません。
ただし、輝さんだけは消滅します。もう知ってしまいましたので。
【輝】
はい。それは結構。

【輝】
僕には、沙羅が受けている責め苦が見える、ってことでいいですよね。
【GM】
はい。痛みで反射的にものすごい叫びを上げているけど何をされているか分かっていない、とかいうのも見えてもいいです。
もう人間の身体留めてないとかでもいいです。
【輝】
はい。
そうですね。そうですよねー。
忍鴉にしたのは正解だったな。神槍片方潰せる。
【GM】
…やはり、そうするんですね。

筆者注釈
輝はこの時点であかり以外全員を敵に回すことを想定していた。
結局は協力することになったが、シロ(忍鴉。矢止めの術が使える)に夢世界を渡したのはそのため。

【GM】
あ、あと、これから登場の際は出島シーン表を、フレーバーで構いませんので振って下さると助かります。
【輝】
フレーバーwww
【GM】
輝さんには、来訪者の見えているもの=そうした出島の光景が見えているということで。
【輝】
了解しました。

【輝】
GM、回想シーンを入れていいかな。回想シーンと言っても、秘密は関係ないんだけど。
【GM】
どうぞ。

雨の中の光景


夢世界を手に入れた後、雨の中で沙羅を抱きしめながら輝が見ていた光景。
GMにだけ以下のような情景描写が表と重なって送られていた。

【輝】
顔を強ばらせながら、沙羅とは距離を取りつつ、そこにいる。

【輝】
己の身は常に業火に包まれている。

【沙羅】
濡れるのも構わず、外に出よう。輝の方へ。
【輝】
近づいてくる沙羅からは逃げない。

【輝】
人間の身体を留めていないものが、こちらに近づき、

【沙羅】
よかった。じゃあ手を掴んで、入り口まで引っ張りたい。
【輝】
わかりました。手を掴まれたら、そのまま引っ張られていきましょう。

【輝】
手を握ったと同時に焼き焦げる。

【沙羅】
「え、でも、だって」ちょっとおろっと。「……ほら、こればっかりは、どうしようもないし」って眉下げて笑う。

【輝】
歪む肉片に必死に沙羅の面影を探し、表情を作る。

【輝】
しぼり出すように、顔を見て、泣き顔のまま笑みを浮かべる。
「君が好きだよ」

【輝】
この世界に来る前、
つまり、死ぬ前から沙羅と輝は一緒に過ごしてきました。
忍務の途中で二人は死に、それぞれの魂は呼び合うようにこの世界にたどり着きました。
ずっと安らかな日々を暮らしていたのに、不知火である輝には、この世界の死者の声が聞こえ、死者の姿が見えていました。
だから、死霊の猫が出てきたのも、その姿こそが現実。
だから、沙羅の姿も、沙羅が何に苦しんでいるかも、ずっと前から、勘づいてはいた。
夢うつつのまま、知っていたから。
全てを終わらせて、安らかな眠りへと誘うために
不知火として、ここに呼び寄せられた燐火を鎮めるために

【輝】
輝は夢世界を破壊します。

【沙羅】
破壊された世界の中で、目の前の姿すらも曖昧で、感触を求めて掌に力を込める。
【輝】
「ねぇ、沙羅。ずっと覚えてたんだ。君のこと。君も今なら思い出せるはず」
「だから、さみしくなんてないよ」
【沙羅】
「……でも、いないんだよ。輝が」拗ねたような声が、可愛げないなぁと自分でも思う。
【輝】
「そりゃ、いないけどさ」少し困ったような声音。それはいつも聞いていた輝の声
【沙羅】
「だから寂しいの。……寂しくくらい、思わせて」
【輝】
「うん…ありがと」
【銀】
せつない

【沙羅】
「……だいすき」
返した声が、届けばいいと思う。
【輝】
「あいしてる」
答えたわけじゃなく、ただそう伝えたかった。

【GM】
一つの世界が崩壊する轟々たる音が響く中、その言葉が届いたかは、きっと本人達にしか分からないでしょう。
歓喜しながら外の世界へと飛び立っていく妖魔達、魑魅魍魎が見えます。遊び飽きて放り捨てられた肉人形が、剥き出しの岩にぶつかり、ひしゃげて砕ける。
『夢世界』という結界は、今や完全に崩壊しました。
【輝】
GM、それらの死体を、優しく焼いてもいいですか?
【GM】
どうぞ。消滅するあなたの、夢世界の主となったあなたの最期の意志が、弄ばれ続けた死体たちを、優しく包み込んで焼いていきます。
【輝】
はい。奥義を使用します。

《神産み・火神被殺》
指定特技 :死霊術
エフェクト:不死身/目覚め/回数制限
効果・演出:己の中に潜む火の神・迦具土を殺すことで、新たな神々を生む儀式を瞬時に行う。胸の傷からあふれだす生命力が身体を奮い立たせる。

【輝】
本当は己の中にいる神を殺して身体を奮い立たせるものですが、神と一体化して自分すら殺し、魂たちに次の世界への活力を。
【GM】
肉体より抜け出た魂達は、輝の炎に活力を得て、さまざまな命となって世界へと飛び散ります。たとえそれが、溢れた妖魔によって蹂躙されるものだったとしても。
肉体すら持てなかった死霊達は、輪廻の円環に。あるいは、冥府への道へ。あるいは、現世にあって幽霊として存在し続ける。そうして、世界へ散っていく。
――世界へ散ったのは、妖魔も同様。
『地獄門』の崩壊よりも規模は小さく、しかし無視するにはあまりにも多数の妖魔達が、箱庭より解き放たれた喜びと、自分を閉じ込めたものたちへの怒りを胸に、千々に飛び去る。

ED-2.新しい朝

シーンプレイヤー:十朱 沙羅、筑紫 銀


【GM】
あなた方は魂とともに飛び交う暗号のような情報の中から、「じぶん」を構成する情報を、無事に見つけ出せました。
【沙羅】
「……終わっちゃったね、銀さん」見つけ出して、全部を思い出して、やっぱり寂しげに。
【銀】
「ん。……そうだねえ。」 夢世界の消えた外の世界を漂いながら、ふらふらと。

【銀】
「ずるいなあ、輝君。一人で全部持ってっちゃった。」
【沙羅】
「ずるい。……けど、仕方なかった、けど、……やっぱりずるい」イメージとしては膝抱えてるかんじ。
「気持ちは分かるし、私も同じ事したけど、ずるい」
【銀】
「……。」 ゆらり、ゆらぐ。
銀は自分ならどうか、などとは考えない。取り返しの付かないことを考えても仕方ないから。
【沙羅】
「折角だから、妖魔になっちゃおうかとも思ったんだけど」もう異形を収めた腕に視線を向ける。「……でも、多分、それは怒られちゃうから」

筆者注釈
沙羅は制御判定には成功した。失敗してたらと思うと…

【銀】
「あはははは! 怒るだろうねー、輝君ならさ。」
「なっちゃってもよかったのに。そしたら俺がちゃんと殺しに行ってあげたよ。」
【沙羅】
「……じゃあやっぱりやめる。銀さんも輝も、きっと怒るだけじゃなくて、悲しむから」
【銀】
「悲しい?」 首を、かしげる。
「悲しいのかなあ。」
「俺にはよくわかんないや。」
【沙羅】
「うん、銀さんはそう言うだろうけど――きっと、心は軋んでるよ」
【銀】
「それは、沙羅ちゃんがそうだから?」
【沙羅】
「ううん。銀さんが、銀さんだから」
【銀】
「沙羅ちゃんも輝君も、よくわかんないこというよね。」
「だから、たのしかったんだけど。」
【沙羅】
「銀さんのほうが、よくわかんないよ。……ね、銀さん」
言うと立ち上がろうかな。外界を見下ろす。
【GM】
下界を眺めれば、どこにでも妖魔が見えます。そして応戦する、恐らくは鞍馬や比良坂の忍びが。
【銀】
「うん?」 首を傾げて。
「どこか、行くの?」
【沙羅】
「私、行くね。輝がくれた『新たな始まり』を見たいから」
【銀】
「あ、そっちに行っちゃうんだ。」
【沙羅】
「うん。ごめんね。……銀さんも、銀さんの行きたいところ、行けばいいと思う」
【銀】
「俺はどうしようかなあ。待ってるだろうし。」 銀にしては真剣に悩む様子で。
「沙羅ちゃんがこっちに来てくれるなら全部解決なんだけど。」
【沙羅】
「銀さんと一緒も、いいと思ったけど……でも、輝がくれたもの、無駄にしたくない」
【銀】
うーん、うーんとその場をぐるぐる回り始める。魂って生前と同じ姿なんだろうか。
【GM】
姿があるとすればそう見えるでしょうね。夢世界で見ていた通りの姿で。
【沙羅】
「好きな人から、最期に貰ったものだよ。無碍にできるはずないもん」
【銀】
「そっかー。そうだよねえー。」

舞台裏の反応

これから

【銀】
しばらくこのままっていう選択肢もあるんだろうか
そのへんの妖魔に食われそうだけど。
【沙羅】
神槍でなんとか。
【銀】
なんとか。
【GM】
幽霊として存在し続けることはできますよ。常夜の忍者あたりに目を付けられた際の保証は致しません。
【銀】
きゃー!すてき!
じゃあ、沙羅ちゃんの背後霊にでもなろう。
【GM】
なるほど。
【沙羅】
子供の頃から。
【銀】
きっと次の沙羅ちゃんには死者の声が聞こえるようになってる。
【GM】
輝くんから何か別のもの受け継いでません?
【銀】
そんなきがしますね
【沙羅】
それはそれで楽しそうだな。

【沙羅】
「……じゃあ、行くね、銀さん」ととりあえず背を向けて。
【銀】
沙羅ちゃんが背を向けても、少しの間ぐるぐる悩んでいたんだけど、 「あ、うん。……あっ」
【沙羅】
「?」
【銀】
「……でも人生やり直すっていうのもなー……。…」 とかぶつぶつ言いながら、沙羅ちゃんの後についてくる。
【沙羅】
「……銀さんも、来るの?」ちょっと意外そう、振り向いた。
【銀】
「うーん。とりあえず、行ってみるだけはね。」 振り向くと足を止める。
【沙羅】
「そっか。じゃあ、ちょっとだけ寂しくないかも」安堵の笑みを口の端に、銀を見上げよう。
【銀】
「どうせ20年も待たせたんだし、もう数十年くらいかわらないよね。」
【沙羅】
「……ちょっとかわいそうになったかも」
【銀】
「沙羅ちゃんはいい子だねえ。」
笑って。沙羅ちゃんがまた歩き始めるなら、その後ろを少し離れて付いていく。
【沙羅】
「だって、なんか、気持ちが分かるんだ」再び歩みを進めながら、そんな風に。
【銀】
「そっかあ。」
【沙羅】
「――きっと、私はずっと、待つことになるだろうから」
【銀】
「いつか、かえってくると、いいね。」
【沙羅】
「とびっきりの”おかえり”、考えとかないとね」
足は止まらず、光へと消えゆく。
浮かべる笑みは寂しげなそれから、未来に希望を抱くそれへと――。
【銀】
今は“次”を考えていない銀は、“次”に向かい始めた新しい沙羅ちゃんを追う。
沙羅ちゃんの中から、輝くんが消えてしまうことはないだろうけれど、それでも、
新しく始めるからには、全てを持ち込むことは許されないように思うから。
俺は“二人の平穏”を、たとえ思い出だけでも、守りたいと思うから。

新たな命は生まれゆく。たとえ、妖魔の脅威満ちる世界にも。
――絶えぬ炎に護られ、有らん限りの、『次』を目指して。

シノビガミ『夢のようなひび』 終幕
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